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AI受託のM&A事例8件と買い手が評価する項目|AIコンサルで独立し、将来の売却を考える人へ

公開日 2026.11.02 | 更新日 2026.11.02著者 COACH AI編集部

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AI受託開発・AIコンサル会社のM&A事例8件を、適時開示などの一次情報から整理。買い手が取得する目的、企業価値の評価で重視される項目、これから独立する会社員・フリーランスが立ち上げの時期から取り組むべき点、M&Aの流れを解説します。

執筆:COACH AI編集部/情報の確認日:2026年11月1日

これから会社員やフリーランスとして独立し、AI受託開発・AIコンサルティング・AI顧問の事業を始める方の中には、「将来、この事業を売却することはできるのか」と考える方もいると思います。

AI受託開発やAIコンサルティングの会社を、上場企業が取得する事例は実際に増えています。2026年だけでも、ココナラ、AI inside、チェンジホールディングス、ブリッジインターナショナルグループなどが、AIの開発やコンサルティングを行う会社の取得を公表しました。取得された会社の中には、設立から数年以内の会社も含まれています。

この記事では、適時開示などの一次情報をもとに、次の5点を順に整理します。独立したばかりの段階で何を準備しておけばよいかも、あわせて説明します。

  1. 国内のAI受託・コンサル企業のM&A公表事例
  2. 買い手企業がAI関連企業を取得する目的
  3. 企業価値の評価で重視される項目
  4. 独立・立ち上げの時期から取り組むべき事業運営の要点
  5. M&Aの実行までの流れ

なお、本記事は株式会社AITECHと株式会社JP-FORCE Holdingsが共同で制作したM&Aガイドブック『AI受託・コンサルティング事業のM&A動向と企業価値向上の要諦』(全24ページ)の要約版です。各項目の詳しい内容はM&Aガイドブックに掲載しています。

この記事の結論

  • 事例:2024〜2026年に、上場企業がAI受託・AIコンサルの会社を取得した事例を8件確認した(各社の開示資料)
  • 買い手の目的:顧客の現場でAIを導入し、定着させるまでを担える人と体制を、早く確保すること
  • 評価される項目:収益の継続性、提供体制の再現性、中核人材、財務情報の整備
  • 独立した最初の時期にやること:継続契約を作る、提供手順を文書にする、会計を月次で締める
  • 売却価格:個別の条件で大きく異なり、事例から相場を一律に決めることはできない

国内のAI受託・コンサル企業のM&A公表事例

2026年に公表された4件

結論として、2026年の事例では、設立から5年以内の会社が、上場企業に数億円規模で取得されています。以下は各社の開示資料に記載された内容です。

株式会社ココナラ → Acrosstudio株式会社(2026年10月7日公表)

  • 取得割合:発行済株式の51%
  • 取得価額:867百万円(アドバイザリー費用等の概算5百万円を含めた合計は872百万円)
  • 対象会社の売上高:162百万円(2024年6月期)、630百万円(2025年6月期)、1,130百万円(2026年6月期)
  • 対象会社の概要:2021年7月設立。在籍63名(2026年9月時点)のうち、コンサルタントとAIエンジニアが7割超。
  • 取得の目的:2026年9月に設けたAIカンパニーの中核とし、ココナラの顧客基盤・人材基盤と組み合わせる。

AI inside株式会社 → 株式会社Wanderlust(2026年9月30日公表)

  • 取得割合:70.0%
  • 取得の対価:普通株式700百万円(アドバイザリー費用等の概算50百万円を含めた合計は750百万円)
  • 対象会社の売上高:2百万円(2024年3月期)、76百万円(2025年3月期)、241百万円(2026年3月期)
  • 対象会社の概要:東京大学・松尾研究所発のAI開発コンサルティング会社。
  • 取得の目的:対象会社のAI戦略の上流からの提案力と、AI insideのプロダクト・実装支援体制を組み合わせ、大型化するAI活用案件に対応できる体制を作る。

株式会社チェンジホールディングス → 株式会社アウターク(2026年9月16日公表)

  • 取得割合・取得価額:公表資料に記載なし
  • 対象会社の概要:2025年に東京大学在学中の代表者が創業。AIを活用したシステム開発と業務変革支援を行う。
  • 特徴:アウタークの代表取締役が、チェンジホールディングスグループのCAIO(Chief AI Officer)に就任。共同創業者2名もグループのAI関連の役職に就任。

ブリッジインターナショナルグループ株式会社 → 株式会社EraX(2026年5月25日公表)

  • 取得割合:100%
  • 取得の対価:普通株式650百万円(アドバイザリー費用等の概算35百万円を含めた合計は685百万円)
  • 対象会社の売上高:30百万円(2025年2月期)、147百万円(2025年3月〜2026年2月の12か月・社内管理資料に基づく参考値)
  • 対象会社の概要:2024年3月設立。創業2期目で30社超の顧客基盤を持ち、導入後も継続して伴走支援する体制を持つ。
  • 取得の目的:中期経営計画で掲げる「AIテクノロジーを活用した売上成長改革の支援」の達成。

2024〜2025年以降のその他の事例

上記のほかにも、次の取得が公表されています(各社の開示内容を要約した報道に基づく)。

  • 株式会社AVILEN → 株式会社LangCore(2024年10月11日公表):100%取得。株式400百万円+アドバイザリー費用等5百万円。生成AI関連システムの受託開発とAI活用コンサルティングの会社。
  • 株式会社テンダ → 株式会社Almondo(2024年12月19日公表):51%取得。510百万円。東京大学・松尾研究所の技術を活用するAIソリューションの会社。
  • 株式会社ロココ → 株式会社Automagica(2025年12月12日公表):70.03%取得。341,822千円。残りの株式は2年後の取得を想定。
  • 株式会社フーバーブレイン → 株式会社ProofX(2026年3月13日公表):51.0%取得。株式306百万円+アドバイザリー費用等31百万円。ProofXの代表者がフーバーブレインのCAIOに就任予定。

事例から読み取れる共通点

8件の事例には、次の共通点があります。

  • 買い手は上場企業であり、AIを自社の事業に取り込むことを目的として明記している。
  • 対象会社は設立から数年以内の会社が多い(EraXは創業2期目、アウタークは2025年創業)。
  • 100%ではなく51%や70%を取得し、創業メンバーが経営に残る形が多い。
  • 創業者が買い手側のCAIOなどの役職に就く事例が複数ある。

ただし、取得価額は各社の売上・利益・成長率・取得割合・交渉条件によって大きく異なります。上記の事例から、売却価格の相場を一律に決めることはできません。また、上記はいずれも複数の社員を抱える会社の事例です。個人で独立したばかりの段階の事業が、そのまま同じ条件で売却されるわけではありません。

買い手企業がAI関連企業を取得する目的

結論として、買い手が取得の目的として挙げている内容は、「AIを実装できる人と体制を、自社の顧客に早く提供できる状態にすること」にまとまります。

各社の開示資料に書かれた目的は、主に次の3つに分けられます。

(1) AI人材と提供体制の確保

ココナラは対象会社の人員構成(コンサルタントとAIエンジニアが7割超)を、AI inside は対象会社の上流からの提案力を、取得理由として説明しています。チェンジホールディングスとフーバーブレインは、対象会社の代表者をグループのCAIOに迎えています。

(2) 自社の顧客基盤への展開

ブリッジインターナショナルグループは、自社の顧客基盤・営業支援ノウハウとEraXの開発力を組み合わせるとしています。AVILENも、自社の780社超の顧客基盤を通じた対象会社の成長を挙げています。

(3) 既存事業へのAI導入

ロココは自社の各事業領域へのAI導入を、ブリッジインターナショナルグループは研修事業でのAI人材育成領域の拡充を、目的に含めています。

これらの記載から、買い手はAIの技術そのものよりも、「顧客の現場でAIを導入し、定着させるまでを担える人と仕組み」を求めていると考えられます。社内でAI人材を採用・育成するよりも、すでに体制を持つ会社を取得する方が早いと判断していると考えられます。

これから独立する方にとっては、AIの技術力だけでなく、「顧客の現場で導入し、定着まで支援した実績」をどれだけ積めるかが、将来の評価に関わると考えられます。

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企業価値の評価で重視される項目

結論として、AI受託・コンサル企業の評価では、「売上が続くか」「本人がいなくても提供できるか」「数字が整っているか」が確認されると考えられます。

開示資料で買い手が評価点として挙げた内容と、M&Aで一般に確認される項目を合わせると、次の4項目に整理できます。

(1) 収益の継続性

単発の受託案件だけでなく、導入後の運用支援や顧問契約など、毎月続く売上があるかが確認されます。EraXの開示資料では「導入後も継続的に伴走支援を行う体制」と「高い継続率」が選定理由として書かれています。

(2) 提供体制の再現性

特定の個人の技術や人脈だけで案件が回っている場合、買い手から見ると、その個人が抜けた後の売上が読めません。EraXの開示資料では、業務委託人材を活用してコスト効率と開発品質を両立している点が評価されています。案件の進め方が手順として決まっていて、複数の人が同じ品質で提供できる状態が求められると考えられます。

(3) 中核人材

コンサルタントやAIエンジニアの人数・経歴・定着状況が確認されます。ココナラの開示資料では、経営陣の経歴と、在籍者に占めるコンサルタントとAIエンジニアの割合が記載されています。また、創業者が取得後も経営に残る形の事例が多いことから、中核人材が取得後も残るかどうかが条件になると考えられます。

(4) 財務情報の整備

上場企業が取得する場合、対象会社の売上高・営業利益・純資産などを開示します。月次の数字がすぐに出せること、案件ごとの売上と原価が分けて管理されていることが、交渉を進める前提になると考えられます。

個人で独立した直後は、(2)と(3)が「自分ひとり」になりやすい点に注意が必要です。売却を考えるのであれば、どこかの段階で、自分以外の人が提供できる体制に移す必要があります。

独立・立ち上げの時期から取り組むべき事業運営の要点

結論として、売却を考えるかどうかにかかわらず、独立した最初の時期から「評価される形」で事業を運営しておくことが有効と考えられます。前の章の評価項目は、取得の直前に整えることが難しい項目だからです。

独立・立ち上げの時期に取り組む項目は、次の5つです。

  1. 継続契約を作る:開発の納品で終わらせず、運用支援・保守・AI顧問などの月額契約につなげる。
  2. 提供手順を文書にする:ヒアリング、要件定義、開発、検証、導入後の支援までの手順と使う資料を決めておく。
  3. 自分以外が提供できるようにする:早い段階から一部の業務を他のメンバーや業務委託に任せ、品質を確認する仕組みを作る。
  4. 会計を月次で締める:案件ごとの売上・原価・粗利を毎月出せるようにする。個人事業主の段階でも、事業用の口座と帳簿を分けておく。
  5. 契約書を整える:顧客との契約、業務委託契約、成果物の権利の帰属を書面で残す。

AI顧問のような個人の知見に頼りやすい事業ほど、2と3の取り組みが企業価値に影響すると考えられます。

なお、M&Aで売買されるのは、一般に会社の株式や事業です。個人事業主のまま事業を続けるか、どの時期に法人にするかは、売上の規模や契約の状況によって変わります。税理士などの専門家に相談したうえで決めてください。

M&Aの実行までの流れ

一般的な中小企業のM&Aは、次の順番で進みます。

  1. 売却の目的と時期を決める
  2. M&A仲介会社またはFA(ファイナンシャル・アドバイザー)を選ぶ
  3. 秘密保持契約を結び、会社の概要資料を作る
  4. 買い手候補と面談する
  5. 買い手候補から意向表明を受け、基本合意を結ぶ
  6. 買い手によるデューデリジェンス(財務・法務・事業の調査)を受ける
  7. 最終契約を結び、株式を譲渡する
  8. 取得後の統合作業(PMI)を進める

仲介会社やFAを選ぶ際は、中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」に登録された機関かどうかが確認の手がかりになります。登録には、中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」を遵守する旨の宣言が必要です。

これから独立する段階では、この流れのすべてを準備する必要はありません。最初は、1の「売却の目的と時期」をおおまかに考えておき、前の章の5項目を日々の運営で続けることが現実的です。

まとめ

  • 2024〜2026年に、上場企業がAI受託開発・AIコンサルティングの会社を取得した事例が複数公表されている。本記事では開示内容を確認できた8件を整理した。
  • 買い手の目的は、AIを顧客の現場に導入・定着させる人材と体制を、早く確保することにある。
  • 評価では、収益の継続性、提供体制の再現性、中核人材、財務情報の整備が確認されると考えられる。
  • これらは取得の直前に整えることが難しいため、独立・立ち上げの時期から取り組むことが有効と考えられる。
  • 売却価格は個別の条件で大きく異なり、事例から相場を一律に決めることはできない。

これからAI受託・AIコンサル・AI顧問で独立する方は、まず継続契約を1件作ることと、提供手順を文書にすることから始めると、将来の選択肢を残しやすくなります。

AIでの独立から、将来のM&Aまでを学べる講座

株式会社AITECHと株式会社JP-FORCE Holdingsは、AI受託・コンサルティング・顧問事業の立ち上げから、将来のM&Aまでを支援しています。

  • 株式会社AITECH:事業設計、AI人材の育成(AIスクール「COACH AI」)、案件獲得の支援、受託開発の監修を担当します。
  • 株式会社JP-FORCE Holdings:事業のバリューアップとM&Aの支援を担当します。中小企業庁のM&A支援機関登録制度に登録しています。

「AI導入コンサル×M&A講座」は、JP-FORCE Holdingsが講師を務める全11回の講座で、2026年11月より順次提供予定です。対象は、M&Aを「売る側」として検討し始めた会社員・学生・フリーランス・経営者の方です。

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